AdWordsサービスに関する商標侵害の成否

googleが提供しているAdWordsサービスについて、広告主がブランド名を検索キーワードとして登録し、ブランド名の検索結果ページに広告を掲載できるようにしていることについて、商標権侵害が成立するかという問題について、欧州司法裁判所の判断が出ました。

1.欧州司法裁判所の判断

この件についてのITProの記事
Google、AdWordsサービスに関する商標侵害訴訟で仏ブランドに勝訴

この論点に関しては、商標権侵害を根拠に訴える相手方として二つの当事者が考えられます。

一つ目は、商標登録されているキーワードを登録した広告主
二つ目が検索サービスの提供者(この事件の場合には、google)

さらに、検索サービスの提供者については、日本でいうプロバイダ責任制限法の適用があるのかという論点が生じます。

欧州司法裁判所の結論はつぎのようなものです(この点については、ジェトロの判決紹介の記事を参考にしています。)

第一の論点については、キーワード広告について、その広告が参照した商品やサービスが、商標権者(経済的に関連性を有する事業を含む)に由来するのかどうかについて、平均的なインターネットユーザーが確認できないか、困難な場合には、商標と同一のキーワード、商品・サービスに関する広告について商標権者は、その広告を阻止する権利を有するものとして、商標ハーモ指令(89/104/EEC)の第5 条(1)(a)および共同体商標に関する商標理事会規則(40/94)の第9 条(1)(a)を解釈しなければならないとしました。

商標ハーモ指令(89/104/EEC)の第5 条(1)(a)というのは、商標登録されている商品又は役務と同一の商品役務について商標と同一の標識を「取引上使用」することを禁止するものです。
共同体商標に関する商標理事会規則(40/94)の第9 条(1)(a)というのも、基本的には同様の規定になります。

次に、第二の論点、すなわち、検索サービス提供者であるgoogleに関する部分ですが

キーワードとして商標と同一の標識を蓄積し、そのキーワードに基づいて広告の表示をするインターネット参照サービスプロバイダー(googleはこれに該当します)は、商標ハーモ指令の第5 条(1)及び(2)、又は商標理事会規則の第9 条(1)の意味における標識の使用はしていないと判断しています。

また、プロバイダ責任制限法に相当する規定の適用については、

電子商取引指令(2000/31/EC)の第14条は、ISPが蓄積データに関して積極的な役割を果たしていない場合に適用されるものと解釈されなければならない。データや広告主の活動が違法であるとの知識を得たときに迅速にそのデータの除去またはデータへのアクセスを無効にすることを怠った場合を除き、責任を問われることはない。

として、基本的に責任制限に関する規定が適用されると判断しています。

キーワードの検索連動広告での使用が商標(標章)の使用にあたるのかについては、商標ハーモ指令の規定ぶりと日本の商標法(あるいは一般的な解釈)と異なるので、日本の判決などへの直接の影響はなさそうな気がします。

2.日本における判決例

検索サービスに関連する商標権侵害についての判決例としては以下の二つの判決があります。

一つは、メタタグに関する事案であり
大阪地裁平成17年12月8日判決(平成16年(ワ)第12032号・クルマの110番事件)

ただし、この事件では、検索結果の表示に当該メタタグ(description meta-tag)が表示されている案件であり、メタタグが表示されない事案でどのような判断が下されるのかは必ずしも明らかではありません。

同判決についての評釈

  • 判時1934号109頁「メタタグへの商標の記述が商標としての使用に該当するとされた事例」判例評論577号213号
  • 島並良「htmlファイルのメタタグへの記述と商標としての使用」最新知財判例法 小松陽一郎先生還暦記念論文集 青林書院

二つ目は大阪地裁平成19年9月13日判決(平成18年(ワ)第7458号)

「しかしながら,原告商品の名称及び原告商標をキーワードとして検索した検索結果ページに被告が広告を掲載することがなぜ原告商標の使用に該当するのか,原告は明らかにしない。のみならず,上記の被告の行為は,商標法2条3項各号に記載された標章の「使用」のいずれの場合にも該当するとは認め難いから,本件における商標法に基づく原告の主張は失当である。」

として、「使用」を否定しています。ただし、本格的に法律論が主張されている事案ではなく(商標侵害については予備的請求)、先例としての意味は少し疑問が残るところです。

3.参考文献

この事件に関連する論文としては以下のような論文があります(いずれも本欧州司法裁判所の判決前のものです)。

前記ITProの記事から参照されているリンク先は以下のとおりです。

  • LVMHの発表資料
    対googleの訴訟としては敗訴しているわけですが、広告主との関係では、一定の場合に侵害が認められうるとの内容のため、判決を評価しているようです。