催告書の著作者でないとして著作権侵害が否定された事案

平成21(ネ)10030 著作権に基づく侵害差止請求控訴事件 著作権 民事訴訟
平成21年09月16日 知財高裁判決 

新聞社の法務室長(個人・原告、控訴人)が、フリージャーナリスト(被告、被控訴人)との間の訴訟です。フリージャーナリストが自らのサイトで新聞社と新聞販売店との販売部数を巡る問題等を取り上げており、新聞販売店と新聞社の紛争でやりとりされた法務室長作成の回答書を掲載したことから、法務室長が回答書の削除を求める催告書を送付したところ、催告書も同サイトに掲載されたので、法務室長が、催告書は著作物に当たると主張して、公表権及び複製権に基づき、フリージャーナリストを訴えたといういう経緯のようです。

原判決(東京地裁)は、

?原告は,本件催告書を作成した者であると認めることができないから,原告の主張は理由がない,?また,事案にかんがみ,本件催告書の著作物性を検討し,本件催告書は,著作権法2条1項1号所定の「創作的に表現したもの」であるとはいえないから著作物に当たらないと判断

して、原告の被告に対する請求を棄却し、それに対する控訴審(知財高裁)判決が本判決です。
結論としては、基本的に東京地裁の判断を踏襲しています。

「催告書」の著作権に基づく訴訟、というと、そもそも著作物なのかがメインの争点になりそうなものですが(もちろん、争点にはなっていますが)、本件ではそれ以前の問題として、催告書は、法務室長が作成したのではなく、法務室長の代理人事務所によって作成されたことが推認されるとして、そもそも著作権者でないという論点で敗訴しています。

もちろん、東京地裁判決は著作物性も否定していますので、いずれにせよ、敗色濃厚な訴訟であるということはいえると思います。そもそも、著作権の問題として争うべき事案であったのか、というところを問題にすべき事案なのでしょう。

なお、本題とは全然関係ないのですが、最高裁のサイトの本判決のPDFファイルでは、控訴人、被控訴人の名前は、個人であるということでX、Yに置き換えられているのですが、別紙の文章目録には催告書がそのまま掲載されており、個人名もそのまま掲載されていてX、Yにしている意味がありません・・・