日本知的財産協会が「職務発明に対する対価の算定基準について」を公表しています。
http://www.jipa.or.jp/jyohou_hasin/teigen_iken/09/100330.pdf
意見の骨子は以下のとおり
日本企業九百数社を正会員として構成する日本知的財産協会(会長:竹中 登一)は、昨年6月25日に出された知的財産高等裁判所(以下、「知財高裁」という。)における職務発明の対価に関する判決(平成19年(ネ)第10056号、1審原告:X1、X2(いずれも発明者)、1審被告:ブラザー工業株式会社)(以下、「本判決」という。)に関して、以下のとおり意見を表明します。
記本判決は、職務発明の対価の算定基準等について言及したものである。その中で、使用者等(企業)が特許発明を自己実施している場合に、特許法第35条第1項の法定通常実施権による減額控除を踏まえた、超過売上を得たことに基づく利益は、通常50?60%程度の減額をすべき、と判示している。
しかしながら、相当の対価の算定にあたっては、超過売上率を40?50%と認定しており、その認定根拠は明確ではなく、その率も経済合理性に欠けた高い数字といわざるを得ない。このような不透明で高い超過売上率の考え方が定着すると、企業の職務発明の奨励意欲の減退や、特許を重視する企業戦略の後退を招き、ひいては、我が国産業の国際競争力を低下させることになりかねない。
超過売上は、いわばゼロベースを出発点とし、案件ごとの事情に応じた超過売上を認定する、という手法がとられるべきである。
今後出される判決には、企業活動の実態をより深く考察し、平成16年改正特許法第35条の趣旨を尊重した透明性のある算定基準に基づく判断を期待したい。
というものです。特定の判決に対して意見を出すというのは珍しいのではないかと思いますが、やはり知財高裁の判断が実務に与える影響を考慮しているのではないかと思います。
超過売上率を40?50%が妥当なのかについては、適当な意見を持ち合わせているわけではありませんが、このような数値は企業ごとに違うはずというのは、知的財産協会が指摘しているとおりだと思います。このあたり知的財産の数量的な評価、算定方法が確立していない点は改善の余地があるでしょうね。