手遊び歌についての著作権侵害についての判決

手遊び歌の書籍に関して著作権侵害及び不法行為の成否が問題となった事案です(請求棄却)。
東京地裁平成21年8月28日判決(平成20年(ワ)第4692号)

手遊び歌とは、判決文にあるとおり、「手あそびは,手,指等の身体を動かす歌のあそびをいい,歌詞やリズムを表現する動きを歌を歌いながら行うものであり,手あそびの対象となる歌は「手あそび歌」と呼ばれている。」というものです。手遊び自体は、この訴訟の原告が一から創作したものであるか疑問なのですが、判決ではその点はあまり問題としていません。著作権侵害の点では大きく分けると編集著作物に関する論点とここの著作物についての侵害が問題となっています。


編集著作物の侵害については、編集著作物であることは認められたのですが、

「原告は,原告書籍本体及び被告書籍
本体の掲載曲の重複曲の選択,原告DVD及び被告DVDの収録曲との重複曲の選択において創作性を有することの主張立証を行うことなく,単に一部の重複の事実をもって原告書籍本体及び原告DVDにおける手あそび歌の曲名の選択の創作的表現が有形的に再製されていると主張するにとどまっている」

として、編集著作物についての複製権侵害を認めませんでした。

また、著作権侵害の点についても、問題となっている手遊び歌の歌詞、振り付けについて、ありふれた表現である、特段の創作性はない等の理由で著作物性を認めませんでした。結論的には妥当だと思います。

さらに、本件では「法的保護に値する利益の侵害を理由とする不法行為の成否」も問題となっていますが、この点についても否定しています。本判決では、

「原告書籍の掲載曲・収録曲の選択及び配列,歌詞及び振付けのオリジナル部分が,法的保護に値するというためには,それが創作性
を有するものとして著作物として保護されるものであるか,取引の対象とされるなどの独立の価値を有するものであることが必要であるものと解される。」

として、「独立の価値」を有するかを不法行為成否の基準としています。成立否定の結論は妥当だと思うのですが、「独立の価値」というのが今ひとつわかりにくいと感じます。