パブリシティ権に関する知財高裁判決

ピンクレディの肖像写真の雑誌での使用とパブリシティ権侵害の成否(侵害否定)
平成21年8月27日知財高裁判決

この事件は、ピンクレディの肖像写真を、雑誌で無断で使用したことがパブリシティ権侵害に当たるかどうかが問題となった事件です(「『ピンク・レディー』ダイエット」という雑誌見出しと写真の使用が問題となっています)。

無断使用ということで直ちに侵害になりそうなものですが、マスコミによる芸能人の写真の使用というのは、その写真の使用により芸能人が受ける利益もあり、いわば持ちつ持たれつの関係にあること(判決では「自らの氏名・肖像を第三者が喧伝などすることでその著名の程度が増幅してその社会的な存在が確立されていくという社会的に著名な存在に至る過程からして」といっています)、「正当な報道,評論,社会事象の紹介等のためにその氏名・肖像が利用される必要もあ」ることから、当然に違法=侵害になるわけではないということです。そこで、どのような場合に合法(あるいは違法)になるのか、その判断基準を巡って争われた事案です。


本件控訴審(知財高裁)の判断は、控訴人、原審判断(被控訴人)のいずれも排斥しています。

地裁(原審)の判断

芸能人等の氏名,肖像の使用行為がそのパブリシティ権を侵害する不法行為を構成するか否かは,その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して,その使用行為が当該芸能人等の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものであるといえるか否かによって判断すべきである

控訴人主張の判断基準

当該著名な芸能人の名声,社会的評価,知名度等,そしてその肖像等が出版物の販売促進の
ために用いられたか否か,その肖像等の利用が無断の商業的利用に該当するかどうか

本判決(知財高裁判決)の判断基準

著名人の氏名・肖像の使用が違法性を有するか否かは,著名人が自らの氏名・肖像を排他的に支配する権利と,表現の自由の保障ないしその社会的に著名な存在に至る過程で許容することが予定されていた負担との利益較量の問題として相関関係的にとらえる必要があるのであって,その氏名・肖像を使
用する目的,方法,態様,肖像写真についてはその入手方法,著名人の属性,その著名性の程度,当該著名人の自らの氏名・肖像に対する使用・管理の態様等を
総合的に観察して判断されるべきものということができる。

おおざっぱには、本知財高裁判決が控訴人(ピンクレディ側)主張と原審判決の中間的な基準という位置づけになりますが、個人的には「社会的に著名な存在に至る過程で許容することが予定されていた負担との利益較量」というのが目新しく感じました。

なお、本判決は、前提として「本件写真は,テレビ番組や歌謡祭のリハーサルの際などに,控訴人らの芸能事務所等が許可し,被控訴人側のカメラマンが撮影した写真で
あって,控訴人ら側から,その使用方法,態様,回数等について特段の事情の申入れがされていないものであった」という認定がなされており、まったく許諾な
しに撮影された映像が使われた事案でなく、本判決の射程を考える上ではこの点に注意が必要だと思います。

2010/04/07追記

知的財産法政策学研究25号に、本判決の評釈が掲載されています。
北村二朗「芸能人の肖像写真が雑誌の記事に利用された場合のパブリシティ権 侵害の成否―ピンクレディー・パブリシティ事件―
本判決の結論には賛成、基準については不明確と言うことで反対意見を示されています。